先日、あやにーさんが10代に動画SNSが流行していて、なぜそんなに流行しているのかについて分析した記事を書かれてました。
この記事に書かれていることは正しいのですが、それだけじゃない理由があると考えています。
というのも、僕がこの記事で語られている10代がハマる動画SNSの1つである「TikTok」に、おじさんなのにハマってまして笑
基本毎日見てますし、ちょっとだけ投稿もしました。
あと僕が投稿型のサービスでプロダクトマネージャー的な仕事をしていることもあり、その観点からすると他の理由があるなと感じたためです。
一言で言えば「投稿者のハードルを徹底的に下げている」という点で優れているなと。
ということで、「なぜ10代に動画SNSが流行るのか」を「投稿者のハードル」という切り口で、投稿サービスのプロマネの立場から述べてみたいと思います。
INDEX
この記事の前提
動画SNSとは?
ココで言う動画SNSは「musical.ly」と「Tik Tok」に限定しています。
詳細はあやにーさんの記事を読んでみてください。
この2つのサービスの特徴は「動画が短い(10秒〜30秒程度)」「音楽にあわせて動画を作り、投稿する」という点です。
お題となる音楽がアプリ上にたくさんあり(しかも有名な洋楽やJ-POPも揃っている)、その音楽を選んだ上で、動画を撮影して、投稿する流れになっています。
↑まずは音楽を選ぶ。すると、投稿画面が出てくる。
この「音楽」がこの記事の重要な要素なので覚えておいてください。
あやにーさんの主張
記事を読んでいない方のために、あやにーさんの主張についても概要を載せておきます。
あやにーさんの言っていることは、10代のインサイトとして正しいと考えています。
おじさん・おばさんがいない
10代の人たちにとって理解ができない人=おじさん・おばさんがいないことで、場の気持ちよさが保たれているという話です。
またTwitterにせよ、Instagramにせよティーンにとってはユーザーの高年齢化も離れていく理由の一つだと考えます。
「うるさい大人がリプしてくる」「おばさんたちの自撮りとか見たくない」など、だんだん自分たちの居場所ではないと気がつき始めているんですよね。その結果、リアルな友達がフォローしてた時点で鍵アカウントにするティーンが急増しているのは、そうした「おじさん、おばさん」に見られたくない、内輪だけで楽しみたい、という子が急増しています。
これはFacebookから若い人がいなくなった理由と同様です。
実際にTwitterでは「ウザい」と言われていて、Twitterの広告のリコメンドがまぁひどいw
↓「tik tok 広告」「tik tok うざい」「Tik Tok ブス」・・・
特にTik Tokは広告をバンバン流していたことから、その広告だけの動画がYoutubeにまとまっていました笑
これはこれで、おじさん・おばさんとティーンの格差が広がっていることの象徴だなと感じています。
本当の「リア充」である必要が無くなった
10代の動画サービスで言うと「ミックスチャンネル」が有名でした。
しかし「ミッスクチャンネル」は、リア充が勝てるルールになっていたと。
でも「musical.ly」や「Tik Tok」は違う・・・とあやにーさんは言います。
私の印象ではミックスチャンネルは、動画配信者のライフスタイルをいかに「リア充」なものに仕上げるのかという部分で、カップル動画や双子動画、踊ってみたなどが人気を集めていました。
ただ、この動画って今までは「仲良しの友達がいる」とか「彼氏とラブラブである」という部分が必要だったわけで。
それがtik tokやmusical.lyでは不要になり、自分ひとりでも「リア充」動画が作れるようになったという大きな違いがあります。
これは実際に使ってみると、「美男」「美女」「カップル」「踊ってみた」もありつつ、他にも「クラスのお調子者」「シュールだけど面白いやつ」のような、今までに無いタイプのカテゴリも生まれていて、見ていて飽きないです。
「投稿ハードル」という観点
あやにーさんの主張の中で議論の余地があるなと思ったのは「なぜmusical.lyやTik Tokを使い続けるのか」という点でした。
「おじさんがいない」については、他のSNSでも成立するので、競合が割といます。
あと「ネオリア充」については、ネオリア充が存在し売る理由の本質が他にあると思いました。
その理由が「投稿ハードルを徹底的に下げる仕組みが用意されていること」です。
これを3つの切り口で説明していきます。
A 「文化」が生まれやすい仕組み
このサービスは「音楽に合わせて動画をつくる」という性質により、その投稿のお題となる音楽ごとに「文化」が生まれます。
ここでいう「文化」は、「投稿フォーマット」に近い意味です。
例えばMartin Tungevaagの「Wicked Wonderland」という曲なのですが、この曲には「最初ブサイクなのに、途中でイケメン・美女になる」という「文化」が存在しています。
あとTik Tokのオリジナルソング「Wink」には、「ウインク+口をパッと開ける」という「文化」があります。
この「文化」が曲ごとに存在し、この「文化」が音楽の数だけ生まれる可能性があります。
これは投稿者からすると「自分が文化の作り手になれる余地がたくさんある」という意味になります。
その曲の「文化」を作れば、有名人になれますし、その可能性があるだけで10代の承認欲求は強く刺激されます。
なのでついつい投稿してしまう、という側面はあると考えています。
B 「文化」をキャッチアップしやすい仕組み
サービスの性質上、動画には必ず音楽がひも付きます。
そして同じ音楽を使っている動画を一覧できる機能もあります。
あと同じ音楽を使っているものの中で人気の動画もすぐわかります。
その「人気の動画」を見れば、この曲はどのような「文化」があるのかがすぐキャッチアップできるのです。
この「文化」がどういう意味があるか、視聴者観点と投稿者観点で述べていきます。
視聴者観点:人は「ベタ」を求めている
人は「ベタ」が好きです。
ダチョウ倶楽部や吉本新喜劇など、幅広い世代に受け入れられている芸人さんや舞台は必ず「ベタ」が存在しています。
キンコン西野さんの「革命のファンファーレ」で、「ネタバレを恐れるな。人は「確認作業」でしか動かない。」という章でも語られているように、人は根源的に見たことがある「ベタ」を求めます。
動画SNSでは「文化」が、「ベタ」になるわけです。
なので見る方からしても「文化」は重要な意味を持っていて、その「文化」をすぐキャッチアップできることに意味があるのです。
投稿者観点:投稿内容を考えなくていい
「投稿する」という行為には3つの動作が内包されています。
1 投稿内容を考える
2 投稿内容をつくる
3 投稿する
この中で実は「1 投稿内容を考える」が1番ハードルが高いです。
投稿するからにはウケたいわけです。
でもどうすればウケるのか…考えるとキリがありませんし、不安でいっぱいです。
しかし動画SNSであれば、この「文化」に沿って投稿すれば間違いないわけです。
つまり投稿内容を考えなくても良くなってしまうんです。
しかもそれに沿っていれば、それなりに反応がきます。
僕も投稿してみたのですが、「文化」沿って投稿したら、おじさんの投稿でもいいね!が10くらい来ました笑
なので1番最初に投稿するハードルが低く、なおかつそれでそれなりに反応が来る。
すると、ついつい投稿し続けてしまう…というわけです。
補足:「チャレンジ」機能
ちなみにこの音楽ごとに投稿する以外にも「チャレンジ」という機能があります。
要は「お題」をたくさん提示してくれる機能です。
これを見て、それに合わせて投稿するだけでもかなり投稿しやすいです。
↓これがチャンレジ機能のキャプチャです。
C 高度なのに操作カンタンな動画編集機能
Tik Tokは「音楽+動画」&「10秒〜30秒の動画」という性質に特化した動画編集機能になっています。
大きく2つの特徴があります。
タイムラプスの度合いがカンタンに変えられる
基本的にUIは「Vine」に近く、長押しをすることで録画をするタイプのUIです。
※↑これ、私じゃないですよ笑
あとこの「長押し」ボタンの上にあるエリアで、何倍速で撮影するかを選択できます。
そうすることで、カンタンに「タイムラプス」にしたり「スロー」にすることができるし、その度合もコントロールできるんですね。
特に「タイムラプス」は非常に使われていて、小気味よく動くでの、見ていて気持ちが良いです。
効果の上乗せがカンタン
あと、効果を上乗せするのもカンタンです。
これが効果の上乗せをする画面なのですが、動画のタイムラインと効果のボタンが並列でならんでいて、「ここに効果を乗せたい」という部分で効果のボタンを長押しすると、その効果が適用されるんですね。
これ、何時間もある動画を編集する時にこのUIだと大変なのですが、動画が基本10〜30秒ほどなので、このUIのほうがむしろ楽だし直感的なんです。
この2つのUIによって高度な動画がカンタンにできるため、投稿者の心をさらにくすぐる、というわけです。
「全員、投稿者」前提でサービス設計が必要
「投稿ハードル」の観点で、動画SNSが流行っている理由を分析してみました。
ここからの学びとしては、これからのサービスは「全員、投稿者」の前提でサービス設計が必要になってくる、ということかなと考えています。
その前提でないと、人を熱中させるサービスを作ることが難しいのではないかと。
前田さんの「人生の勝算」でも、「余白」の重要性が語られています。
つまり「余白」がないと、自分ごと化せず、熱狂ができないと。
この「余白」は、「いかに参加性があるか」とも言いかえられるかと思いますが、その1つの流れとして「全員、投稿者」という方向性はありうるのではないでしょうか。
関連記事
あやにーさんの記事でもありましたが、musical.lyのアプリはなんと800万ドル(日本円で約890億円)で買収されています。
この「全員、投稿者」の方向性のサービスはまだまだ盛り上がる可能性があると考えています。
これからのサービス作りの参考にする意味でも、10代の動向は引き続き追っていきたいと思います。
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