72時間ホンネテレビが終わった。
すべてを見ていたわけではないが、合計したら12時間くらいは見ていたかもしれない。
特に森くんのくだりは食い入るように見ていた。
「今まで見たこと無いものを見てしまった。」
直感的にそう思っていたが、何がそう思わせるのだろうと、漠然と考えていた。
考えているうちに少しずつ整理できた気がしたので、言語化してみようと思う。
「72時間ホンネテレビ」は、ひたすらにテレビの破壊活動であった。
完全さ
ネット動画では「身近さ」が人を引きつけるコンテンツになるということを証明してみせた。
一般人の「普通の様子」が日々Youtubeでアップされている。
逆にネット動画に芸能人が出ると、どうしても「完全さ」を求められてしまう。
テレビの圧倒的な制作力で作られた動画の中でしか、動く芸能人を見たことがないからだ。
しかし「72時間ホンネテレビ」はどうだろう。
不完全さの塊だった。
企画もふわふわしているし、編集する余地もない(生放送だから当たり前だが)し、あまり寝ないで頑張る3人はボロボロだった。
でも、それが人々の心を強く惹きつけた。
コメントも応援の嵐だった。
特に森くんと話している部分なんか、台本なんて全くなかっただろう。
しかし、だからこそ、タイトル通りの「ホンネ」が溢れかえっていた。
森に可愛がってもらっていた香取は「一番最初に聞いたときは、ふざけんなと思った。これからだったし、一番近くにいたからかもしれないけど、なんで言ってくれなかったんだっていうのがあったかもしれない」と打ち明けた。
引用元:http://news.mynavi.jp/news/2017/11/04/100/
この引用した箇所も、不完全さが生んだ賜物だろう。
「プロの不完全さ」がウェブ上でコンテンツとして認められた瞬間だった。
肖像権
「#72時間スクショ選手権」の企画は度肝をぬいた。
ネットで写真を使うのもNGだった元ジャニーズメンバーのスクショを自由に撮ってOK。
しかもシェアもOK。
これはコンセプトの勝利も多分にある。
芸能界、そしてテレビ業界の真逆をやってのけた。
ただ、それを実現するための調整たるや尋常ではなかっただろう。
他の事務所の芸能人の方も出演されていた中で、誰もやったことがない企画を実現したのは快挙ではないだろうか。
この肖像権の壁を取り払ったことで、視聴者が一緒にテレビを作り上げることができるようになった。
クリエイターを一気に増やしたわけだ。
そして「トレンドで世界一位を取る」という目標を一緒に目指すことができるようにした。
しかも、見事にその目標を達成してしまった。(それが「森くん」というワードだなんて、なんてドラマチックなんだろう)
この「スクショ+トレンドを目指す」という楽しみ方は、ウェブ番組ですらなし得なかったのではないだろうか。
この発明は、きっと今後広がっていくだろう。
この番組は肖像権まで破壊していった(正確には調整の賜物ではあるが)。
干される、ということ
新しい地図の3人は、レギュラー番組が残っているとはいえ、干されていると言っても過言ではない。
またSMAPを脱退した森且行も、実質テレビから干されている状態であった。
しかしあくまで干されているのは「テレビ」というメディア上だけなんだ、ということを知らしめた。
あの3人と森且行が映像の中で一緒に映っている画は、干されているからこそなし得たことだ。
逆に「テレビから干されている」という事実が、視聴者の結束を産んだ。
共通敵ができると、人は結束するものだ。
その妙な一体感があの時間にはあった。
そして延べ人数とは言え、視聴者数は7200万人を超えた。
テレビと全く遜色が無いほどの視聴者を、ウェブだけで獲得した。
「テレビで干されたからなんだ。」
「もうウェブでやっていける時代は到来している。」
「これからはウェブでも、テレビ以上に影響力を与えていけるんだ。」
そんな宣言が動画の向こうから聞こえた気がした。
テレビのプロデューサーという個人ではなく、大多数の個人の意志が反映されるという意味で、より健全な方向に向かっていくと確信できた。
世代の垣根
ウェブには世代の垣根がある。
ある一定の年齢以上になると、どうしてもウェブに対しての不安や恐怖が大きく、リテラシーも高くない。
ましてやウェブテレビなんて、もってのほかだろう。
その世代の垣根を「72時間ホンネテレビ」は破壊していった。
Twitterを見ていると、普段スマホを触りたがらない世代の人まで「どうやって72時間ホンネテレビを見れば良いんだ」と子供に聞いている様子が見て取れた。
この世代がウェブテレビを体験した、という事実は凄まじいものがある。
その壁を、ウェブのどのサービスもほとんど超えられずにいた。
それを超えていくほどのコンテンツ力が、この番組にはたしかにあった。
私の中で「イノベーション」は「未来のあたりまえを作ること」だと定義している。
この番組はまさに「イノベーション」であった。
未来のテレビを作ってしまった。
今回の番組で圧倒的な「箔」がついたAbemaTVは、きっとすごいことになっていくだろう。
AbemaTVは、サイバーエージェントは、そして新しい地図は、今後どんなことを仕掛けてくれるのだろう。
この番組はスタートライン。
これからが、とても楽しみだ。
あー生きててよかった。
※追記
個人的には「SMAP初めての5人旅」のときのような姿をまた見たいという思いもあります。また仲良く歌っている姿を見たいなぁ……。
あの時中居くんが涙をしている姿を見てから、「BEST FRIEND」が好きな曲になりました。